超望遠レンズの機能
手振れ補正機能は、近年とくに熟成が進んでいる撮影補助機能です。シャッターボタン半押し状態から手振れを打ち消すように光学系の一部が上下左右にシフトし、ブレを抑えクリアな高画質をもたらしてくれます。
これにより、従来撮影不可能と思われたシーンにも対応できるようになった大変便利な優れものですが、野鳥撮影においても注意を必要とするポイントがありますので詳しく見ていきましょう。
手振れ補正モードのレンズの動き
手振れ補正は上記のように、モードによって補正効果を変更する機能が幾つか付いています。ニコン(VR)・キヤノン(IS)とレンズメーカーごとに補正機能にも独自のアルゴリズムがありスイッチの機能をそれぞれ理解する必要があります。各メーカーごとの手振れ補正の機能スイッチに付いて解説していきます。 ※レンズによって付いている機能は異なります
ニコンのVR機能スイッチ
- ノーマル
- 常用に適したVRモードです。このモードには「流し撮り検知」機能も搭載されており、レンズを上下もしくは左右に振ると瞬時に自動的に振る方向の補正をストップします。また、レンズの振りを止めると数秒で戻ります。
- アクティブ
- 船や自動車など乗り物からの撮影や、足場の悪い所での撮影などブレ幅が大きい状況に適したモードです。撮影者の身体そのものが揺れやすい状況で撮影するときのブレをより効果的に軽減します。
- トライポッド
- 三脚使用時のモードです。超望遠レンズの場合は撮影時のミラーやシャッターの動きによって三脚が細かく振動し、その影響で画像にブレが生じる場合があります。この振動は手ブレとは動きが異なるため、専用のモードが搭載されています。
ただし、近年はライブビュー撮影の進歩でカメラ側の振動を殆ど発生させずに撮影できるシステムがあります。その場合はVR機能をオフにしなければ逆にブレを発生させてしまいます。三脚使用時はこのモードで全てOKという事ではありませんので、野鳥撮影のみならずこのモードについてはきちんと理解する必要があります。
キヤノンのIS機能スイッチ
- 手振れ補正モード1
- 常用のISモードです。ニコンのような「流し撮り検知」機能は超望遠レンズ群には搭載されておりません。流し撮りの場合は次のモード2で手動切替します。
- 手振れ補正モード2
- レンズを上下もしくは左右に振ると瞬時に自動的に振る方向の補正をストップします。また、レンズの振りを止めると数秒で戻ります。
- 手振れ補正モード3
- シャッターを切った時だけ手振れ補正を作動させるモードです。被写体を追い続けるときに、IS機構が働くことでファインダー像が動くことが望ましくない場合に使用します。
- 三脚使用時の自動的な機能オフ
- キヤノンのIS自動オフ機能は、撮影者の思い通りに機能しない場合がありますので、面倒でも手動でオフにしましょう。
どの機能に設定するとどういう補正動作をするか踏まえたうえで、筆者の実践例をあげます。これが完全な正解ではないかもしれませんが、参考になればと思います。
実例
- 手持ち撮影・一脚使用時(止まり物メインの時)
- VR:ノーマル IS:モード1
- 手持ち撮影・一脚使用時(飛び物メインの時、足場が悪い場所や強風の日)
- VR:アクティブ IS:モード1
- 流し撮りをする
- VR:ノーマル IS:モード2
- 流し撮りをする(足場が悪い場所や強風の日)
- VR:アクティブ IS:モード1
- 三脚を使用する(止まり物メインの時)
- VR:ドライポッド IS:オフ
- 三脚を使用する(飛び物メインの時、足場が悪い場所や強風の日)
- VR:アクティブ IS:モード1
- 三脚を使用する(無風でカメラ側の振動が発生しないライブビューでの撮影)
- VR:オフ IS:オフ
- フォーカスリミッター
- 野鳥撮影には極めて有用で、フォーカスの動く範囲を距離別で制限するものです。レンズごとに設定できる距離があらかじめ決められており、設定した距離範囲内のみでAFが機能するようになります。範囲を狭めることでAFの高速化が図れますが、その範囲外に野鳥が不意に現れた時はスイッチを切り替えるかMFで撮らねばならなくなります。焦点距離の長いレンズほど設定距離が長く設定されています。
- 設定距離の一例
- AF-S 800mm f/5.6E FL ED VR : FULL ⇔ ∞-10m
- AF-S 600mm f/4G ED VR : FULL ⇔ ∞-10m
- AF-S 500mm f/4G ED VR : FULL ⇔ ∞-8m
- AF-S ED 500mm F4DU : FULL ⇔ 12-4.6m ⇔ ∞-10m
- AF-S 400mm f/2.8G ED VR : FULL ⇔ ∞-6m
- AF-S ED 400mm F2.8DU : FULL ⇔ 7-3.5m ⇔ ∞-6m
- AF-S 200-400mm f/4G ED VRU : FULL ⇔ ∞-6m
- AF-S 300mm f/2.8G ED VRU : FULL ⇔ ∞-6m
- AF-S 200mm f/2G ED VRU : FULL ⇔ ∞-5m
- EF800mm F5.6L IS : 6m-∞ ⇔ 6m-20m ⇔ 20m-∞
- EF600mm F4L ISU : FULL ⇔ 4.5m-16m ⇔ 16m-∞
- EF600mm F4L IS : 5.5m-∞ ⇔ 5.5m-16.2m ⇔ 16.2m-∞
- EF500mm F4L ISU : FULL ⇔ 3.7m-10m ⇔ 10m-∞
- EF500mm F4L IS : 4.5m-∞ ⇔ 4.5m-10m ⇔ 10m-∞
- EF400mm F2.8L ISU : FULL ⇔ 2.7m-7m ⇔ 7m-∞
- EF400mm F2.8L IS : 3m-∞ ⇔ 3m-10m ⇔ 10m-∞
- EF300mm F2.8L ISU : FULL ⇔ 2m-6m ⇔ 6m-∞
- EF300mm F2.8L IS : 2.5m-∞ ⇔ 2.5m-6.4m ⇔ 6.4m-∞
- EF200mm F2L IS : 1.9m-∞ ⇔ 3.5m-∞
- M/Aモード、A/Mモード
- ニコンレンズにしかない機能です。M/AモードにするとAF動作中にピントリングを少しでも動かすとその時点でMFに切り替わります。コンティニュアスで野鳥を追っているときに、AFが効きにくい状況に変わるときなどに極めて有効です。A/MモードはAFの優先度合いが高く、少し大きめにピントリング動かした場合のみMFに切り替わります。M/Aモードでは敏感すぎるという要望に応えた比較的新しいレンズにのみ採用されている機能です。
- フォーカスプリセット
- あらかじめ決めておいた距離のフォーカスポイントに瞬時に戻す機能です。ピンポイントでよくとまる枝などの場所にあらかじめ距離を設定しておくと、フォーカスを移動しても瞬時にその枝に戻すことができます。
ただ、普通にAFしてもその枝にピントは持ってこれますので野鳥撮影ではあまり有用な機能とは言えないかもしれません。ニコンレンズは後述のボタンを割り当てる事で機能し、キヤノンレンズはピントリングの少し前に付いている、ギザギザの再生リングを数ミリ程度回すと機能するようになっています。
- AFストップボタン
- フォーカスリングの前や後に直径10mmほどの円周上に4つ程度付いているボタンで、これを押している間フォーカスを止めることができます。ニコンレンズ(名称:フォーカス作動ボタン)ではフォーカスプリセットの機能に割り当てるボタンにもなります。AFストップ機能自体は、動体予測系(コンティニュアス、AIサーボ)の設定しているときに一時的に静止物系(シングル、ワンショット)のフォーカス機能として使いたいときに有用です。
キヤノンの中級機以上のモデルにはこのAFストップボタンにいろいろな機能を割り当てることができます。筆者が一番有用と考えているのは、フォーカス特性を瞬時に変えられることです。通常は1点フォーカスのモードにしておき、AFストップボタンを押している間だけゾーンAFに変更したりすることができます。筆者はこの機能のためだけにキヤノン機材をセレクトすることもあるくらいです。
AFストップボタン設定の一例( 通常時 ⇔ AFストップボタンを押している間 )
- 1点AF ⇔ 45点自動選択
- 1点AF ⇔ スポットAF
- ワンショット ⇔ AIサーボ
- 45点自動・敏感度 - 速い ⇔ 45点自動・敏感度 - 遅い
- ゾーンAF・中心優先・敏感度 - 速い ⇔ 19点自動・連続性優先・敏感度 - 遅い
超望遠レンズ群には、普通のレンズには無い特殊な機能がいくつかあります。普通の広角〜中望遠のレンズでは見たことの無いような切替スイッチやボタンがあるのが外観からも見ることができると思います。
野鳥撮影でも有用な機能、殆ど使用しない機能がありますので、それらについて詳しく解説していきます。
sponsored link